X-T3 review |
X-T3を導入しました。12月後半に購入とおもっていたのですが、発売キャンペーンにも乗りたかったので発売日購入です。
X-T2は借りて何度か使っただけですが基本部分はX-pro2と同じですから、ここまで使用してきたX-pro2とX-T3を画質の面では比較しても問題ないでしょう。台風の影響で、薪割りも釣りも自転車も、野鳥観察にも行けずに閑なので、長文です
さて、新型X-T3のいちばん気になる画質ですが、重箱の隅を突かなければ、X-pro2(=X-T2)とX-T3はほとんど違いは無い…というか、進化は無いように見えます。人によって許容ISO感度は変わりますし、撮る絵によってもノイズ感は変わると思いますが、通常の撮影なら私的にはX-pro2もX-T3も常用ISO3200、非常用ISO6400かなというところです。これはEOS7Dならば常用ISO400、非常用ISO800。7D2ならそれぞれ1段上かなとおもっていた感覚での数値です。
SONYが常用感度ISO51200を謳っているのに、いまどき富士はISO12800?という意見もあるようですが、フルサイズとAPS-Cならば物理的に先ず1段違うのは当然でこれは仕方がありません。となれば1段分しか差はありませんし、更にX-T3は1/3段ではありますが基準感度をISO160に下げてもいます。ISO12800以上になると一段分の違いは単純なS/N比の問題では無くて、画像エンジンによるノイズの誤魔化し(塗りつぶすとか暈かすとか)能力とか、メーカーによるノイズ除去での絵作りに対する考え方の違いのようにおもえます。もちろんもっとノイズを少なく、もっと高ISOが使えれば、それはそれに越したことはないのですが、富士フイルムが考えるところの、絵を作りすぎないでノイズを目立たなく出来る画像エンジンの現在の技術は、常用感度としてはISO12800までなのでしょうから、私としてはそれほど不満はありません。
AFは格段によくなりました。といっても野鳥撮影で比べると十数年前のEOS7D+初代EF100-400mmと、ほぼ同等の速さと動体への食い付きになったかなというところです。ランダムに速く動く被写体へのAF-Cの設定の各パラメータが決まらず未だ試行錯誤中ではありますが、後ろに抜けてしまったAFが戻らないといった例は少なくなりました。
森の枝の中をあちこち飛びまわる小鳥というのは、AF撮影の中では最もピントを合わせにくい被写体のひとつだろうとおもいます。が、なんとかこれが追えるようになったことで、Xシリーズも野鳥や野生動物を撮れるカメラにはなったように感じています。
ただX-T2とX-T3はボタンやダイヤルの配置はほぼ同じで、相変わらず親指AFが使いにくいです。私はAE-LボタンをAF-ONへと変更して使っていますが、押しにくいですね。富士フイルムは、このことは判ったうえでのボタン配置のようです。X-H1では使い易い場所にAF-ONボタンが配置されています。この点やボディ内手振れ補正搭載という事からみても次期X-H2の方が、野鳥、野生動物向きのカメラなのかもしれません。
X-T3も、そしてなんとXF100-400mmも、どちらも登録時のアンケートにある設問の、どんな被写体の撮影に使いますか?の答えの選択肢にスポーツはあれども、野鳥・野生動物はありませんでした。レンズの今後のロードマップにもフルサイズ画角で500mmとか600mmに対応する単焦点の明るい超望遠レンズが無い事からも、富士フイルムが現時点では野鳥や野生動物の撮影に本気で対応しようとしていないことは確かでしょう。そこはNikonやCanonとははっきり立ち位置が違う点だとおもいます。SONYは今後の超望遠レンズの展開次第で、やる気度が見えてくるでしょう。
X-T3を使っていて、やっぱり気になったのはバッテリーの減りの速さです。特に野鳥や野生動物の撮影ではファインダーを覗いている時間が他の撮影に比べると何倍にも長くなります。一眼レフ機ならば電源がスリープしても、そのまま被写体を見続けて、チャンスが来たらシャッターにふれればスリープ解除から直ぐに撮影が出来ます。でもミラーレス機の場合は電源がスリープすればEVFが使えなくなりますから、一眼レフ機と同じように撮ろうとすると、あたりまえの話ではありますが常に電源を入れておかなければなりません。またリフレッシュレートが高くドット数も多いEVFの方が、背面モニター(LCD)より電力消費は大きいようです。
各社のバッテリーの容量と価格を比べてみました(価格は価格.comの最安価格です)
SONYα7IIIのバッテリー、NP-FZ100は2280mAh 7099円
NikonのZ-6、Z-7のバッテリー、EN-EL15bは1900mAh 4320円
CanonのEOS-Rのバッテリー、LP6-ENは1865mAh 6950円
富士フイルムのXシリーズミラーレスは、NP-W126Sは1260mAh 6210円
富士はAPS-Cでボディが小さいからとバッテリーも小さくしたのでしょうか? センサーの大きさではなく、画素数によるデータ処理量とEVFの表示ならば4社ともそう大きくは変わらないはずです。手振れ補正がレンズ側にあるのは、ボディ側手振れ補正と比べると電気を喰うものとおもわれます。
なのに、驚くのはNikonもCanonも全く新たなミラーレスフルサイズ機シリーズの始まりなのに、バッテリーに関しては過去の一眼レフ機との互換性を優先してサイズを変えてこなかったことです。ミラーレスはあきらかに一眼レフ機より電気を喰うのに、ユーザーが手持ちのバッテリーと互換性があることが、他社に流れないで同社機を継続して買う理由になると考えたのでしょうか?、両社ともレンズマウントは変えてきたのに。その点SONYは値段は高いけれども判っていらっしゃる。
さて、X-T3ですがブーストモードというのが搭載されています。バッテリーは早く無くなるけれども性能、機能は向上するよ、というモードです。ブーストモードをオンにすると、
AFスピードがMaxで0.08sec.から0.06sec.
EVFフレームレートが60fpsから100fps
撮影間隔が0.19sec.から0.17sec.
レリーズタイムラグが50msec.から45msec.
ブラックアウト時間 0.106sec.から0.96sec.
と、大幅に向上します。というか、この数値を見たら普通はブーストモード入れっぱなしで撮影しますよね。X-T2の時にはバテリーグリップを装着しなければブーストモードは使えなかったのですから、ブーストモードの呼び名でもよかったとはおもいますが、X-T3は単体でブーストモードが使えるのですから、これを標準モードと呼んでデフォルトにして、現行のノーマルモードを選択可能なEcoモード(節電モード)にすべきでしょう。ブーストモード時にファインダーに表示される余計なブーストマークも必要無くなり、節電モード選択時にecoマークが出る方が、使い勝手も良いはずです。
他にもX-T3にはバッテリーの問題があります。富士はXシリーズではX-T2からバッテリーをNP-W126Sに更新しました。その前のX-pro2まではNP-W126で、この2つのバッテリーは互換性があります。私はX-E1、X-E2,、X-pro2と使ってきましたからNP-W126は幾つも持っていて、これをX-T3でも使おうとおもっていました。
ところが、X-T3にNP-W126を入れて電源スイッチをオンにすると毎回「電池はNP-W126Sを使用してください。NP-W126は消耗が早くなり、ブースト機能が制限されます」とEVFファインダーや背面モニターにデカデカと3秒ほどダイアログが出るのです。起動した途端にシャッターを切ればダイアログは消えますが、ダイアログが出ている間はダイアログに隠れて被写体は見えません。あまりにお馬鹿な仕様にこれは腹が立ちます。こんなもの表示させるぐらいなら、はじめから互換性など無いもっと大きなバッテリーを積むようにした方が、どれほど先のために良いか…。
そして実際にそのままNP-W126を使うと、なんと高速連写の11fpsが8fpsに抑えられてしまったり、X-T3のウリのひとつである電子シャッターの20コマ/sec.や30コマ/sec.が使えなかったりもします。ブーストモード入れっぱなしで1日フィールドに野鳥の撮影に出掛けるならば、少なくともNP-W126Sを3つは必要でしょう。縦位置バッテリーグリップという手もありますが、小型軽量ボディーのメリットから見ると本末転倒のような気もします。ただ冬季の低温時の使用を考えると、縦位置グリップは使わなければならないかもしれません。
NP-W126Sを使わなければX-T3のフル機能が使えないのなら、少なくともここはユーザーへのサービスとしてNP-W126プラス3000円ぐらいでNP-W126Sに下取り交換して欲しいですね。そして、次のモデルからは少しボディが大きくなろうと2000mAhくらいのバッテリーに替えてくれた方が、今後のために良さそうな気もします。
それでも何故?富士フイルムのXシリーズを使おうとするのかと言えば、私にとってはAPS-Cで充分だからです。A3ノビまでの大きさのプリントまでならばフルサイズに比べて画質が落ちることはないでしょう。自分が撮った写真をそれ以上の大きさにプリントすることは、先ず考えられません。
また一眼レフより軽く小型なミラーレス機でも、もちろんフルサイズに比べればAPS-Cのボディはやはり小さく軽いですし、広角から中望遠までの単焦点レンズもまたフルサイズ用に比べれば、これもかなり小さく軽くなります。フルサイズと同じ画角のレンズセットを持って歩くならば、かなり軽量化されて機動力は上がりますし、フルサイズと同じ重量を持って歩くならレンズの数を増やせますから、より撮影のバリエーションを拡げることが出来ます。
そして何よりAPS-Cは価格が安いです。フルサイズ機で最新機能を盛り込んだフラッグシップ機を買おうとおもえばトンデモ価格で手が出ませんし、フルサイズ機を持つメーカーはAPS-C機には同等の機能を持つフラッグシップモデルは作らず差別化します。富士フイルムはAPS-Cにフラッグシップ機があるわけで、フルサイズ機の普及クラスの価格で機能満載のフラッグシップ機を買えるのは嬉しいですね。レンズもフルサイズ機用に比べれば安い設定です。単焦点の46mmフィルター径シリーズXF交換レンズ群はどれも、他のメーカーなら作ることが考えられない魅力的なレンズだとおもいます。
X-T3はOP/TECHのSuperClassicストラップを付けました。最近は格好の良い機能的なストラップがアレコレ出ていますが、私は望遠レンズを付けるボディには昔からこのストラップです。クッション性とストレッチ性があって、重いレンズでも肩の負担が少ないのと、簡単に外すことが出来るので、三脚を使うときに風があっても外すことでストラップへの風当たりでブレるのをふせぐことが出来るのが便利です。久しぶりに買いましたが、昔はこんなに安かったかな?
XF100-400mmで撮影していて、グリップの小ささでカメラが支えにくく、純正のグリップを追加しました。たぶん深セン辺りの町工場で王さんやら劉さんやらが純正グリップを手に入れてサイズを測ってCNC旋盤でコピー品を作って、4000円ぐらいで年末までにはサードパーティー製を出してくるだろうけれど、それまで待てないので高い純正品を購入しました(実はネットの通販カメラ店の価格表示ミス?で、半額ぐらいで買えてしまったけれど…)
でも、先ほどAliExpressのサイトを覗いたら既に24ドルぐらいでX-T3専用品を販売していました。近いうちにamazonで買えるでしょう。
アイカップも装着してあった純正品から、これも富士の純正品のGFX50S用の丸く柔らかなラバー製の大きなものと入れ替えました。装着部分は全く同じ造りなので簡単に交換できます。好みの問題でしょうが、私にはこの方がEVFが見やすく撮影に集中できるように感じます。またアイセンサーの誤動作もより防げるでしょう。ただ、縦位置のアングル撮影で背面モニターを右ヒンジで開こうとすると、アイカップが干渉して開けません。滅多にこの使い方をしないであろうことと、背面モニターを使うならばEVFは覗かないのですから、使いたいときにはアイカップをちょっと上にずらせばよいだけなので、私には問題なしです。