松尾ジンギスカンを自転車で食べに行く |
しばらく考えて今日は700Cランドナーとしました。走るコースは昨日ガイド仕事の途中で通りかかって、丘陵地帯の麦畑が綺麗だった女満別、網走湖周辺とします。先ずはスタート地点のJR女満別駅駐車場へ。ここで車から自転車を出して出発ですが、もう11時半を廻っています。
先ずは女満別駅近くの石造りの大型倉庫の前で記念撮影です。ここには似たような倉庫が何棟も並んでいてちょっと絵になる場所です。女満別の町も昭和レトロな商店が並んでいて撮影散歩したら面白そうな場所なのですが、今日は時間が足りないので通過です。
少し走ると、ああ! なるほどこれを裏から見るのか。広い畑に一列に植わった木は黒澤明の『夢』に登場した撮影ポイントで、国道脇に広い駐車場があってそこからこの畑の景色を見るのですが、今日は国道に平行する農道から、この景色を裏から見たって訳です。
さらに軽いアップダウンの農道を進むと踏切を渡って網走湖畔に出ました。しばらく湖沿いを進むと呼人漁港です。広い漁港には網走湖で漁をする漁船が沢山繋がれたり陸揚げされたりしていますが、誰ひとりとして人を見かけることはなく、どんな漁に使うのかを訊くことも出来ません。
港の先から内陸に入って進むと広大なスポーツ公園です。話には聞いていましたが、これほどの規模とは驚きです。ラグビーコートだと7面とれて全日本や実業団チームの合宿場所として有名ですが、他にも野球場やテニスコート16面、アーチェリー場などなど。うーん、これにベロドローム(自転車用トラック)と一周2〜3キロのクリテリウムコースがあったらなぁ。
スポーツ公園から国道に出たところが「金印わさび」の大きな工場でした。原料になる山ワサビ(ホースラディッシュ)が、この辺りで沢山採れるのでしょう、
「金印わさび」は高品質な粉ワサビのブランドで、どちらかというと業務用に使われることが多く、うちでも使っています。ファクトリーアウトレットとか直売所とかあるかなぁと覗いてみましたが、そんなものはありませんでした。
女満別駅から1時間半近く走ったのですが、まだ15キロも進んでいません。ちょっと走っては止まって自転車から降りて写真を撮ったりを繰り返していますから、なかなか行程がはかどらないのです。が、行程を進めるのが今日の自転車遊びの目的ではないので遅いのは構いません。自転車の速度なら、車では気付かないものがいろいろ見えてきますから、その度に止まっては写真を撮ったり景色を楽しんだり。それにしてもお腹がへってきました。
国道を網走方向に進むと松尾ジンギスカンの看板が見えてきます。今日の自転車散歩で唯一、行こうと決めていたのがこの店です。
昔はどの町にもあった松尾ジンギスカンの支店は、弟子屈の町にもあったのですが一度も店に入らないうちに閉店してしまいました。他の町の店も閉店してしまっ他ところが多いのでしょう、最近ではあまり見かけません。この呼人支店の建物は実に昭和レトロで、これを風情と呼んでよいかどうか考えてはしまいますが、昔はこんな店があちこちにあったよなぁと懐かしさも感じます。
ちょっと入りにくい店ですが、自転車を入り口脇に立てかけて引き戸を開けて入ると、狭いですが明るい店内です。小さなテーブルが4つとまん中にストーブで、店の中も予想通りのレトロさで、壁に貼ってあるポスターは、なんと1972年の札幌冬季オリンピックのもの。客も店の人も誰もいないので奥に声を掛けると、元気のよいオバチャンが出てきてメニューの説明をしてくれます。ロースは霜降りみたいな肉。上は脂が少なくて、並は脂肪の多い部分の肉とのこと。で、800円の上とライス200円を頼みます。これで1000円の昼飯。
ガスコンロに火を付けて、奥から器に入った味付け肉とモヤシを鍋にドバッとまとめて載せて、モヤシは廻りの溝に寄せて、肉は片側が焼けたらひっくり返して焦げる前に食べるのよ、と教えてくれます。自転車だったので内地からの旅行者だとおもわれたのかもしれません。
もっと羊臭い硬いマトン肉を期待していたのですが、柔らかでクセのない肉でした。でもなぁ、肉の量は少ないし何かもの足りない。
未だこういうタイプのジンギスカンがアリかという懐かしさと驚きはあるのですが、でも今時、この量と味で1000円の昼飯は無いよなぁ、ともおもうのです。これも知の悲しみのひとつなのかな。
それでも愛想の良いオバチャンと店の雰囲気はなかなか素敵で、近くに来ることがあったら、雪の季節にでもまた寄ってみたいなともおもいました。
ここまでは網走湖畔の緩い小さなアップダウンの道を走ってきましたが、ここからは網走の街の裏の天都山から女満別の町の方へ伸びる尾根の上の道を戻ります。そのためには先ず尾根へと登らなければなりません。考えられるルートは3本ありますが、一番交通量の少ない道をいきます。
緩やかなカーブの続く農道をだんだんと上っていきますが、陽射しは強く舗装路はジリジリと暑く、登りで速度が出ないので風も当たらず汗が吹き出ます。
食事直後に登りはキツイよなぁ、それにジンギスカンの甘辛タレで喉が渇くこと。傾斜がきつくなって8%を超えて続く辺りで、木陰を見つけて止まって水を飲みます。ひと休みしてからフロントインナーでクルクル廻しながら登って尾根の上にでたところが網走農協の巨大な麦の貯蔵施設でした。
丘の上に建つこの明るい色の巨大な建物は数十キロ離れた場所からでもよく見えてランドマークとなってはいます。が、美瑛などにも似た、この丘陵地帯の美しい田園風景をぶち壊すセンス無い建物でもあります。なんでこんなに目立つ場所に建てたのでしょう。
どこからでもよく見える建物の脇にいるのですから、周りの景色はよく見えます。眼下には網走湖や国道。オホーツク海や知床半島の山々。摩周湖や阿寒の山々。はるか遠くには東大雪の山々も見えます。登ってくるのはしんどかったですが、この眺めは来た価値はあります。
緩い上り下りを繰り返しながら進むと、何軒かのサクランボ農家が続く場所に出ます。ちょっと食べたいなと寄って見たのですが、サクランボ狩り専門で即売はしていないそう。どこか買える場所ありますかと訊いたら、2キロほど戻った野菜直売所にあるというのでUターンです。食い意地だから登りも気にせずサクランボを無事購入。
ここから女満別駅までは、ほぼ下りで十数キロです。途中、黒澤明の『夢』のロケ地の朝日丘の展望台でサクランボを食べながら休憩。あとは一気に下って、今日の40キロほどの自転車散歩は終了です。
今日は自転車での撮影に初めて富士フイルムのX70を実戦投入しました。掲載の写真は全てjpegの撮って出しです。小さなボディながら解像感や色、ヌケの良さなど素晴らしいとおもうのですが、AFはあれど手振れ補正は無しの28mm画角の単焦点のみってのは、やっぱりキツイ部分もありますね。APS-Cで手振れ補正付きAFで24-70mm画角のコンデジ、ってのが自転車旅の理想かな。
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