ヤマゲラ |
野鳥や野生動物の観察・撮影ガイドでは、お客さんの希望と対象の野鳥や野生動物の違いによって柔軟なガイドスタイルをとります。今日のお客さん達の場合はクマゲラの子育て撮影が主目的でしたので、営巣木の近くにブラインドを張って、虫除けスプレー、殺虫スプレー、熊撃退スプレーを渡して、私自身は車を離れた場所移動させて待機しています。撮影では人が少ないほど相手に対してのプレッシャーは小さくなりますし、撮影者の車を見つけることによって撮影場所を捜す悪質なガイドも居るので、その対策でもあります。もちろんお客様が望むならば撮影場所に付き添うことも出来ます。
今日は野鳥撮影のベテラン2名でしたから、簡単な説明だけで、あとは車でそう遠くない場所で待機していました。携帯電話が通じる場所でしたから、撮影を終えたと連絡があったら迎えに行けばいいわけです。
待機時間は車の中で昼寝なんて勿体ないことはしません。せっかくのフィールドですからあちこち歩いて廻る良いチャンスです。歩くことによって車での移動では気付かない、いろいろなものが見えてきます、聞こえてきます。
車を駐めた場所からすぐ僅かの所の山側、45度ほどの急傾斜の斜面の上の方の枯れ木に、新しいキツツキの穴を見つけました。観察するのに7〜8mは斜面を登らなきゃなりません。岩と土と滑りやすい枯葉の斜面を登っている途中、誤ってカメラを落としてしまいました。急な斜面を撥ねながら転がり落ちた7D+100-400mmですが、泥だらけにはなったものの奇跡的に岩にはぶつからず、傷も付かず、動作にも影響は出ませんでした。
カメラを拾いに林道まで降りて、???煩いほどのセミの声の中にチチチチチチって鳴き声が微かに聞こえてきます。どうやら鳥の雛の声のよう。先ほど見つけた樹の穴かと最初はおもいましたが、もっと近くです。なんと林道の脇の枯れ木の、それも根本から僅か高さ1mちょっとの場所に3cmほどの径の丸い穴が開いていて、そこからヤマゲラのヒナ達が顔を出して鳴き叫いているのでした。崖なんて登らなきゃ良かったと後悔。
さっそくカメラの泥を落として親が餌を持ってくるのを待ちますが、近くの木にまでは飛んでくるものの警戒して寄ってきません。う〜む、どうしようとしばし考えます。まず。車を巣穴から数十メートル離れた場所まで移動して駐めます。斜面を横切る形で切られた林道の山側の斜面の枯れ木に道路に向いて穴が開いているので、谷側の斜面に降りて道路脇の草むらの中からレンズだけを出して待つことにしました。この作戦は正解で、すぐにオス(頭の赤い方)もメスも、交互に餌を運んでくるようになりました。
ヤマゲラはヨーロッパからロシア、モンゴル、東南アジアにまで広く分布する鳥ですが、日本では北海道だけにしか棲息していません。警戒心が強く影に隠れたがる性格もあって、なかなか綺麗な写真が撮りにくいのです。今日の撮影も晴天の真っ昼間なのに巣穴のある場所は暗く、ISO800でf5.6開放でも1/30くらいしかシャッタースピードが稼げず苦労しました。明日は明るいレンズを持って再チャレンジしてみます。
ヤマゲラは5~8個くらいの卵を産むそうですが、穴の径が小さいので確認できたヒナは3羽でした。巣立つまで、あと一週間ぐらいは観察を続けることが出来そうです。
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