650B |
昨日到着されたお客さんの伝統的なランドナーです。25年ぐらい前のVelo Wood Bell製のフレームに国産とフランスパーツが混在した、実用本位のツーリング車です。ホイールは当時はスタンダードだった650x38Bのリムとタイヤです。このサイズのホイールは今やツーリング車としては絶滅寸前かともおもわれ、この手の旅行用車を造ろうとするとMTB規格の26HEか、ロードバイクと共通規格の700Cを使うということになっていました。ところが、この650Bホイールが復権しそうな勢いなのです。今、MTB乗りたちの間では650B(27.5インチ)って何だ?? と話題集中なのだそうですが、昔からの旅行自転車乗りたちにとっては、それって、ごく当たり前の規格だったのです。
MTBはアメリカで始まったスポーツ自転車で、いかにもアメリカらしくメーカー主導、コマーシャルベースで企画、製造、販売されてきました。ホイールサイズは長く26HEが主流でしたが、ここ数年は新しい規格として大径29インチホイールの29erが伸びています。タイヤ径が大きい方が走破性は高くなりますから、体格の良いアメリカ人には向いた規格なのでしょうし、なによりメーカーは新しいものを流行らせて稼ぐことが出来ます。が、径の大きなタイヤは小回りは効きにくいですし、体の小さな人が乗りこなすのは難しく、日本人の小柄な体格では、とくに身長170センチ以下のライダーでは29erはどうみてもサイズが大きすぎるようにおもえます。このホイール径の大きさの問題は競技自転車の先進地域のヨーロッパでも考えられていたようです。
そして、それを解決すべく出てきた新たな規格が650Bなのでした。26HEと29erのほぼ中間ともいえる650Bは、より多くのライダーにフィットするであろう規格として、この秋発表、発売される2013年モデルのMTBに、アメリカだけではなくヨーロッパブランドの幾つものメーカーからニューモデルが発表されています。ホイールの径が変わることは単にリムやタイヤの問題だけではなく、専用のフレームからギア比などにまで影響しますから、すぐに爆発的な普及にはならないとはおもいますが、今後数年で日本やヨーロッパ、アジアの国々ではMTBのスタンダードな規格に成長していくのではとおもいます。少なくとも650Bの参入によってホイールサイズの選択肢がひとつ増えたわけで、使う場所、使い方、体格によって、より自分にあったMTBが選べるようになるのでしょうね。
で、ここからがツーリング自転車への影響です。650Bの規格が(再)普及すれば、とうぜんタイヤの選択しも増えていくことでしょう。もともと650Bというサイズで作られていたランドナーですから、今でも650Bで作るのがフレームサイズ550mmくらいまでなら、もっともバランスがとれて美しい旅行用自転車が作れるとおもうのです。旅に使う自転車は、また自転車ファンが乗る自転車は、単に性能だけではなく美しくなければいけないとおもっていますし、その点から見てもMTBの650Bホイールの登場は、ツーリング自転車ファンにとっては650Bのツーリング車を新たに作れる選択肢が増えるわけで、実に嬉しい話、流行だとおもいます。