オーロラは見えるのか? |
今日は快晴の夕暮れで、これは良い兆候です。すっかり暗くなる6時まで待ってから摩周湖の第1展望台へ向かいます。国道の温度計は既にマイナス15度。車のフロントガラスを通しても満天の星空なのが判ります。
第1展望台で見廻してみると天頂はたしかに素晴らしい星空ですが、地平は全周、これは光害だなぁ。まず、展望台の売店の防犯灯?が明るすぎます。南には弟子屈や標茶、遠く釧路の街の灯りまで、これはもうハッキリと見えます。西方向の美幌峠がボーッとシルエットで見えるのは、その向こうに美幌や北見の街の灯りがあるからでしょう。東の摩周岳もシルエットになるのは、その裏にある中標津の街の灯りのためかもしれません。北の方向だけが山が高く、やや暗く、でもオーロラが見えるのならこの方向のはずです。
低緯度でのオーロラは、ふつうイメージする光のカーテンのようなオーロラではなく、肉眼では見えるか見えないか程度の赤い光なのだそうです。赤気などと呼ばれて昔から知られていたそうですし、条件さえ揃えばそれほど珍しいものでもないそうですが、長時間露光で写真に撮ってオーロラがあったのだと判る程度のことが多いそうなのです。という訳で第1展望台に着いて即、撮影準備です。
5Dmark2に28mmの単玉、シャッタースピードはバルブにして、手が冷たいのでレリーズを使って数を数えながらポケットの中でシャッターを切ります。あれこれ試してみてISO200でf2.0で、ゆっくり10数えるぐらいがよさそう。デジタルですから試し撮りで確認できるのが便利です。
で、北の空を撮ってみたら、おお!! 空が赤く写っているじゃありませんか。これが低緯度オーロラなのでしょうか?
比較のために西の美幌峠方向を撮ってみました。棒のような光は女満別空港へ降りるジェット機です。
これは南の弟子屈、釧路方向。こちらは明るいのでシャッター速度はゆっくり3つ数えます。
そして、こちらは東の摩周岳方向です。山の向こうは中標津?
こうやってみると、北の方角だけは空の赤さが他の方向より明らかに強いことが判ります。よしっ!! 低緯度オーロラの写真を撮ったぞ!! と、撮影を成功したことにして、これで終わろうかとおもったのですが・・・
たしかに北の空は赤く写っています。が、この山の向こうにも清里や斜里、小清水、そして網走の街があります。他の方向とは違う赤い色だからオーロラだと、おもいたいところではありますが、もしかしたら街の灯りなのかもしれません。さて、どうやればオーロラなのか街の灯りなのかが判るのでしょう。
考えた末に出た結論は、街の灯りが北側に無い場所で撮影してみればいい、つまり、オホーツクの海岸から北の空を撮ってみればいいわけです。まさかロシアの街の灯りは邪魔しないでしょう。
昨日の大雪で道路はガチガチに凍っていて、ドライ路面でも1時間近くは掛かるオホーツクの海岸まで走るべきかどうか、ちょっと迷いましたが、今日は泊りのお客さんもいないし、磁気嵐に遇える確率を考えれば行くしかないでしょう。
真っ暗な391号線を法定速度+αに、もうひとつαを足したぐらいの速度で北へ向かいます。美留和を過ぎてしばらく走ったところで、一瞬、右手の雪の中に光りが見えたような気がしました。車が落ちてる!! 急ブレーキを掛けたら車は右へ左へと滑りまくって、なんとかカウンターステアで体勢を立て直して急停車。Uターンして戻ってみると車の中から人が這いだして来るところでした。怪我はないようです。
スーツ姿で這い出してきた人は、訊くと川湯の大きなホテルの社員だそう。飛び出した鹿を避けたらスピンして道路下に落ちたのだそうです。90キロくらいは出していたとか。国道の気温計はマイナス17度を指していたし、車を引き出すのはこの時間では無理でしょう。拾ってしまったものはしょうがない、寄り道ですが川湯温泉経由でホテルまで送ります。
藻琴峠を越えた辺りで北の空を撮影出来ないかと期待したのですが、やはり海岸線の街の灯り美しく邪魔をします。こうなれば予定どおり海岸まで走るしかありません。
海岸まで出て国道を網走方向に少し走って、締まっているドライブインの駐車場から北の空を確認です。北極星を捜してその方向を見ると、オホーツク海の向こうが北ではありますが、左手の網走の街の灯りが目に付きます。ここで写真を撮ったら網走の光が干渉するでしょう。さて、どうする? 頭の中の地図帳と過去の記憶をひっくり返して考えます。知床方向に走れば、どこまでも網走の街の灯が干渉する可能性が高そうです、ならば網走の街より北側に出よう、となると能取岬がよさそうです。冬の能取岬は何年ぶりでしょう、それもこんな夜遅くに行くことになるとは。
岬の広々した草原は雪に覆われていて、海は穏やかでまだ流氷はないようです。さて撮影をと三脚を出していたら、うーん、困った、ここにも邪魔な光があるぞ。能取岬灯台のことをすっかり忘れていました。かなり強い光が(灯台なんだから当然ですが)8秒に一回まわって海面を照らしています。こりゃダメかなとも考えましたが、灯台は水平線より上は照射していないはず。かえって海が写っていいかもと考え直して撮影です。さて、赤い空は写るのか?
風が強くて長時間露光ではカメラブレが起きていますが、摩周湖と同じ条件では赤い色は同じようには写りません。あの赤い色はやっぱり街の灯りだったのでしょうか? が、かすかに空が赤いようにも見えます。
上の写真をPhotoshopで露出を上げてみると・・・この方向には街はありません。やっぱりオーロラ?
ためしに能取岬から網走の街の方角も撮ってみました。
オーロラは写ったのでしょうか? 写らなかったのでしょうか?
あらら、撮影を終えて時計を見たら、もう10時を廻っています。網走の街まで戻ったら国道脇のミスドがまだ営業中でした。せっかく網走まで走ってきたんだし、土産にドーナッツでも買って帰えろ。