2021年 04月 25日
渡辺浩德写真集『アッカムイちゃん 北の森のエゾモモンガ』 |
ここ数年、道内のあちこちでカメラマン達がエゾモモンガを追い回しているようだ。プロのカメラマンも何人も居るようだから、近いうちにエゾモモンガ写真集が次々と出てくるのかもしれない。
出版社、編集者、エージェントは何が売れるかにはとても敏感だ、というかそれが仕事だとも言える。時代の先を読んで何が売れるか? 何がブームになりそうか?アンテナを張っている。今回、そのアンテナに引っかかったのが渡辺浩德カメラマンということなのかもしれない。こういっちゃあなんだけれど、自分を積極的に売り込むことをしない(出来ない)というプロとしては困った性格の職人タイプのカメラマンで、これまではどちらかというと裏方的に写真を発表してきた。だから、これが彼個人としては最初の写真集になる。
動物写真の場合、写真集が作れるほど撮影しようとすれば、ふつうは少なくとも1年は撮影する必要があるし、数年以上かかるのもよくあることだ。エゾモモンガなら冬の集団生活はせいぜい3か月ほどだし、1日20時間ぐらいは穴の中で寝ているし、毎日の撮影チャンスは夕方の穴から出てきた直後の実に僅かな時間になることが多い。だから1シーズン撮影したとしても写真の細部にごだわる撮影は出来ても、写真のバリエーションには限りがある。その点、渡辺浩德さんのエゾモモンガならここ10年ほど撮影したストックがもう大量にある。この写真集を見ると、よくまあ、こんないろいろなシーンを撮ったものだと感心する。私もエゾモモンガの撮影はするから、これだけの写真を撮るのにどれだけ粘らなければならなかったのかと驚くばかりだ。
惜しむらくは版形が小さいこと。これだけの良い写真がちょっと勿体ないなと思ってしまうのだけれど、でも価格が1500円だ。高校生のお小遣いでも買える価格で、より多くの人に手に取って貰えると考えれば、これも有りなのだろう。
全ての写真に撮影時のエピソード、解説が付いているというのがとても良い。巻末にまとめて付いているから、ページをめくっての作品を観るのには邪魔にならないし、解説を読めばエゾモモンガの生態を理解することができる。今の時代のネイチャー写真のカメラマンはナチュラリストでもあるべきと最近強くおもっているのだけれど、だから単に可愛いだけの写真集でないのがいい。
本のタイトルは出版社が付けたもので、ナベさんは、うーん、と言っていたと付け加えておかなきゃね。
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by troutinn
| 2021-04-25 16:46
| 野鳥・野生動物