釧路のラーメン海皇旭店 |
もともと特にラーメン好きという訳ではないし、最近は昼飯にラーメン屋に入ることも滅多にありません。でも移住して宿をはじめた頃、釧路に仕入れに行ったときには、この「海皇旭店」にはよく行きました。当時釧路では珍しかった九州風の白濁豚骨スープに北海道風の太めの縮れ麺、それに大きな豚バラの角煮がのった霧色ラーメンは、オリジナリティー度高くて釧路らしいネーミングもよく、お気に入りでした。
店の内装は開店の時から同じままで、壁の上の方にはズラッと60年代ロックのLPジャケットがビニールを掛けられて、二十二年分の汚れを付けて飾られています。このアルバムのラインナップを観ると、店の主は私とそう違わない世代、同じような音楽を聴いてきたのだというのが判ります。カウンターの向こうでは、無愛想というわけではないですが寡黙な夫婦が何時ものように丁寧にラーメンを作っています。奥には10月22日に閉店しますとの張り紙もありました。
22年間営業しての閉店ですから、うちとほぼ同時期の開店です。閉店の理由は判りませんが、それなりに流行っている店ではあります。ラーメンを作っているご夫婦も歳をとったなとおもいますし、向こうから観れば客の私も(覚えていてくれるなら)同じだけ歳をとったなとみえるでしょう。
釧路の駅前通は再開発で古いビルが壊されて新築工事が進んでいますし、私が移住してきた頃にあった店も随分と消えてしまいました。二十年が長いのか短いのか、この店のラーメンをもう二度と食べられないのは残念というか、これも時の流れなんだな、などとおもいながら、ちょっと寂しく食べたのでした。