BROOKSのサドルバッグ用のサポーター |
チネリのスーパーコルサの高速自転車散歩では、財布や携帯電話の持ち運びをどうするかで悩んでいました。パンク用の予備のチューブやCO2ボンベ、携帯マルチ工具などは広口のドリンクボトルに入れて、シートチューブのボトルホルダーに差してあります。ジレやウィンドブレーカーが必要な場合はジャージの背中のポケットでに入れます。問題は財布、iPhone、ポケットティッシュ、車の鍵です。ジャージの背中ポケットに入れていたこともありますが、汗で濡れるのが困るのと落車時のダメージが怖いので、なにか良い運搬法がないかと考えていました。
せっかくロードレーサーで走るのですから体に負担の来るウェストバッグやバックパックは嫌です。となると自転車に付けるバッグで手頃なものを探さねばなりません。はじめはTopeak製の厚手ナイロン製のものを使っていましたが、機能的には充分なのですが、スチールの細身のフレームの自転車には、どこか似合わないのです。あれこれネットで捜して見つけたのがBROOKS社ののD-SHAPED TOOL BAGでした。英国の老舗の革製サドルのメーカーだけあって製品寿命の実に長い商品が多く、私もツーリング用の自転車には革製サドルのTEAM PROチタンレールモデルを愛用しています。
今回のBROOKS D-SHAPED TOOL BAGは、なんと驚くことに1910年のカタログに載っているそうで、アウタースリーブをサドルのバッグループに革ベルトで吊すように固定しておいて、インナーのファスナー付きバッグをスライドさせて抜き出すユニークな二重構造になっています。1910年というのは明治43年、日本が韓国を併合した年ですから、そんな昔にファスナーなんてあったの?とおもいましたが、調べてみると既に1800年代末には製品化されていました。当時は実にモダンなバッグだったことでしょう。
現行のD-SHAPED TOOL BAGは黒、ハニー、ブラウン、グリーンと、それに私の使っているAGED DARK TANの5色から選べます。日本での現在の販売価格は税抜き14000円と安くはありませんが、円高ユーロ安の1€が100円ぐらいだった頃に、たしかドイツの自転車店から50€ほどで海外通販購入したのでした。
このバッグはとてもコンパクトでサイズ的には私の目的にはピッタリですし、デザインもスーパーコルサに似合うとおもうのですが、困ったことがあります。サドルははサンマルコのチタンレールのリーガルを使っています。これも1980年代からのクラシカルなサドルですが、もちろんその当時でもレース用のサドルにはバッグを吊すためのサドルループなどは付いていません。
サドルレールに直接バッグを吊してみたり、懐かしい東京サンエスのVIVAのサドルバッグループを購入して(これもたぶん70年代頃からあって、まだ造っていたのが驚きです)それに吊して使ってみました。ところが困ったことに、これらの吊し方ですとバッグが自重でサドル下側に潜り込んでしまって、クランクを廻す太ももの裏側に当たってしまうのです。それにダラッとぶら下がってブラブラしているのも、なんとも格好が悪い。
そこでアルミのアングル材を加工して、バッグが垂れ下がらないよう矯正するサポーターを造ってみました。これは予想通りに機能してバッグを固定できたので、最近まで使用していました。が、なにせアルミのアングル材です。格好も悪いし、落車したときなどにアングル材の角で怪我でもするのじゃないかと気になっていたのです。
先日、釣り仲間の金属加工のスペシャリストが遊びに来たときに、このことをおもいだして見て貰い、アングル材の角を丸めたり不要部分の肉抜き加工が出来ないか訊ねてみました。もちろん彼の技術ならばそんな加工はお手のものでしょうが、アーティストとしての美意識が、そんなモノは格好悪くて、とおもったようです。新たに造ってみるからということでサドルとバッグとアングル材のサポーターは、釣りの帰りの荷物と一緒に東京原宿にある彼の工房へと運ばれたのでした。
で、雨の日の今日、飛脚が運んで来た段ボール箱からサドルやバッグと一緒に新たなサポーターが出てきました。チタンの細い丸棒を切ったり曲げたりして溶接して造られていて、SUSのM3キャップボルト2本でサドルレールに取り付けるのですが、チタンのバネ性を利用してガッチリ留まります。バッグを付けてみても弛むことなくピタッと止まって格好良いこと。細かな溶接が多用されているのですが、その溶接痕もじつに美しいのでした。そして重さを量ってみたところ僅か32gしかないのです。私の手製アルミアングルサポーターは70gありますから、半分以下まで軽量化もできたのでした。
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