エゾライチョウを撃つな |
この春はエゾライチョウに出会える回数が少ないようです。今時期ならば5〜6時間林道を走り回って探せば多い年なら2桁、少ない年でも4〜5ペアは観ることが出来たのですが、このところ1〜2ペア観るのがやっとです。観察&撮影ガイドでエゾライチョウを観に出掛けて、今のところゼロという日が無いのが救いですが、実にきわどい。ガイド中では最高でも3ペアと少なく、探索範囲をかなり拡げて私的に探しに行ったときも4ペアまで、こんな春は初めてです。
数回出掛けてだけの結果ならば、運が悪かったということもありそうですが、毎回観るのは同じ個体だけで同じ場所で、たった数ペアだけというのは、数が減ってしまったと判断しても良さそうです。減った原因が何なのかは判りませんが、もしかしたら昨年夏の台風の影響があるのかもしれませんし、捕食動物のせいかもしれません、猟期にこの林道でハンターが撃ったためかもしれません。
エゾライチョウはじつは猟鳥です、ハンティングで撃ってよい鳥の扱いです。それでありながら北海道レッドデータブックでは希少種に分類されています。希少種とは『存続基盤が脆弱な種または亜種(現在のところ、上位ランクには該当しないが、生息・生育条件の変化によって容易に上位ランクに移行する要素を有するもの)』です。これを猟鳥のままにしてあるのが実に不思議です。
ちょっと驚く数字ですが1920年代から50年代にかけて北海道のエゾライチョウの肉が主にクリスマス用としてアメリカに、年間5〜6万羽も輸出されていたのだそうです。また1967年に6万羽が捕獲されていたという記録もあります。これらの捕獲圧が現在までのエゾライチョウの減少の原因になったことはまず間違いないだろうとおもえます。
最近はジビエブームなどもあって、エゾライチョウを食べる話しや、食べさせるレストランの話しなどもネット上で散見されます。このような状況がこのまま進めばレッドデータブックのエゾライチョウの位置は希少種から絶滅危惧種へと、上へ上へと登っていくことでしょうし、そうなってからでは生息数の回復は非常に難しくなるとおもわれます。リョコウバトやオオウミガラスがハンティング対象だったためにどうなったかを思い出すべきでしょう。
もともと生息数が少ないし、エゾライチョウを狙うハンターも少ないのだから捕獲圧は現在は高くない、だとか、エゾライチョウを食べるのは北海道の文化なのだから。などという意見もあるようですが、それが希少種を殺してよい理由になるとはおもえません。エゾライチョウの捕獲は少なくとも資源回復が確実になるまで中止すべきでしょう。
内地の高山のライチョウと違って、冬でも白くはならない保護色の地味な色合いのエゾライチョウですが、よく観ると実に美しい羽根を持っています。また林道を車で走っていて、驚いて地面から近くの枝に飛び移ったエゾライチョウは、こちらが静にしていれば、そのまま飛び移った木の枝の芽を食べ始めることも多く、警戒心は薄くバードウォッチャーにフレンドリーな野鳥でもあります。この性格が簡単にハンターに撃たれてしまう事にもなるのですが、だからこそ狩猟対象から外したいのです。エゾライチョウをShootするのは散弾銃ではなく、これからは望遠レンズ付きカメラだけにしたいですね。
今日の日記のタイトルはちょっと過激ですが、もちろんエルトン・ジョンのアルバムタイトルのもじりです。
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