2016年 10月 26日
XF23mm F2 |
フルサイズで35mm画角相当のAPS-C23mmレンズ。XF23mm F1.4は写りに良さで定評あるレンズですが高価です。購入しようか迷っているうちに明るさ1段暗くして小型化したXF23mm F2の発売の噂が出てきて、販売が正式発表されて、10月6日に発売されました。昨年秋から1年近く、このレンズの発売を待っていたことになります。
あえてF2を待ったのはX-proの光学ファァインダーがほとんどケラレない細身の鏡胴小型のレンズで、ストリートスナップには良いんじゃないかとの期待です。それに価格がF1.4の半額近くというのも嬉しいし、F1.4と違って防塵防滴で動作保証温度が-10度というのも、X-proのボディの防塵防滴マイナス10度と合わせられるので魅力です。
で、購入してしまったXF23mmF2を実際に手に取ってみると、その細さと軽さに驚きます。F1.4はフィルター径が62mmに対してF2は43mmで、1段違うだけでここまで細くなるのですね。重量も300g対180gと大きな差があります。ところが長さは63mm対51.9mmでそれほど変わりません。XF18mmF2の長さ40.6mmと比べるとかなり細長く見えて、装着時に横から見ると、ひょろ長くてちょっと格好悪い。最短撮影距離が0.28m対0.22mmや、絞り羽根枚数が7枚対9枚というのは同じ23mmでもF1.4よりもF2のほうがスペック上は有利ですね。このレンズをX-pro2に着けてテスト撮影で釧路の街へ出掛けました。
先ずは夕暮れの釧路港です。秋刀魚の棒受け網漁の漁船が多いのですが、夕暮れだというのに人影はまばら。集魚灯に集まる秋刀魚を網で掬う夜間の漁ですから、この時間はもう出港準備で忙しいはずなのに。
船の掃除をしていた漁師さんに声をかけて話を訊くと、時化だから漁は休みとのこと。港の中は風はやや強いものの水面は穏やかですが、沖は北風で荒れているのでしょう。大型の棒受け網漁船は出るようですが、中型小型の船は休みです。
夕暮れの太陽を直接画面の中に入れて撮ってみますがハレーションもゴーストも出ずコントラストの低下も無くシャープかつクリアな絵が撮れます。これはちょっと凄いです、拍手喝采するほど素晴らしい。
新釧路川を渡った先の貨物埠頭のある西港では釣り人が糸を垂れていました。狙いはシシャモでポツポツ釣れていましたが、コマイの方がたくさん釣れるようです。釣って直ぐ干しておけば冷たい北風に晒されて、今日の晩酌の肴になりますね。f2.8で撮ってボケ味はよい感じです。広角で開放F2のレンズですから、何が写っているのか状況が判る程度(この場合ならバックが防波堤の釣り人)のボケ量で使う分には最適です。
夕飯の後は栄町の行きつけのBARへ。これも手前のボトルにピントで背景が何か判る程度のボケ量。かなり寄れるレンズなのですが、F1.4との差はここに出て背景をトロンとボカしてしまうことは出来ません。たとえばキノコなどを近接で撮って背景の森の様子も判るていどにボカす、などという使い方に向いていそうです。
新世代の受光素子搭載機、X-pro2とX-T2のフィルムシミュレーションモードのACROSでのモノクロ写真。このシミュレーションモードが使えるというだけでもX-pro2とX-T2は使う価値があるとおもってます。かなり暗い状況でも顔認識AFが効いていて、マニュアルなら私の目ではピント合わせは無理か、可能だとしても時間のかかる状況でも問題なく素速く撮れます。まあ、これはボディ側の性能の話しなのですが、XF23mmの高速AFだからこそチャンスを逃さず撮れる訳もあります。これまで使ってきたCanonの一眼レフ機とAFの速さは同じくらいというか、AFの速度でのストレスは感じませんでした。
BARから幣舞橋を渡ってホテルへの帰り道の夜景2枚。FujiのXシリーズのカメラをX-E1、X-E2,そして今回のX-pro2と使ってきて感じるのが、夜景を撮ったときのクリアな絵の良さです。このレンズもまた夜景撮影を愉しくしてくれるレンズですね。
今日も朝食のあとは漁港をカメラ散歩です。
私の好きな写真サイトにデンマークのjonasraskphotographyというのがあります。Jonas RaskはFujiのXフォトグラファーですが職業は医者でプロのカメラマンではありません。風景やポートレートなども撮りますが、なんといってもストリートスナップが素敵なのです。本人はドキュメント ストリートスナップと呼んでいますが、街と人の自然な表情や姿など、機動力のあるXシリーズのカメラならではの撮影が素晴らしいのです。
が今、これを日本の街中でやるのはかなり拙いというか危険ですね。肖像権の問題と騒がれますし、カメラを向けた人に先ず嫌がられます。勝手に撮ったと暴力沙汰や警察沙汰になることすらあります。声をかけて許可を取って撮影すれば問題ないのでしょうが、街中で被写体向きの人に声を掛けて撮るのでは、たとえ許諾を貰っても相手もカメラを意識してしまうでしょうし、自然な姿を撮るのは難しいでしょう。Jonas Raskのサイトを観ていると、ヨーロッパじゃあどうしてこんな写真が撮れるのだろう、撮影を許されるのだろうと羨ましくもおもえます。
その点、漁港で漁師さんに声をかけて撮らせてもらうのなら、いけます。もちろん嫌がられたり断られる場合もありますが、たいていはOKです。仕事の最中を撮る訳ですから、作業に没頭していることが多くてカメラの存在など気にせず、自然な姿が撮れるのがいいですね。中には撮った写真送ってよとポーズとられて困ってしまう場合もありますが、新たなレンズを買うと先ずは釧路港に撮りに出掛けるのには、このような理由もあるのでした。
小型軽量、AFが速い、防塵防滴、動作保証マイナス10度、逆光に強い、最短撮影距離が短い、絞り9枚羽根でボケが綺麗…、そして比較的安価な価格設定。もう、良いことだらけのような気もしますが、実は大きな欠点があります。
最短撮影距離でのの絞り解放時の甘さです。えーっ?と声が出るほど、もう甘々の画像になってしまうのです。昔は明るいレンズを開放で使うと甘さが目立つのを、レンズの味などと表現する人も多かったですし、開放で撮る女性のポートレートがフワッとして素晴らしい、なんて評価もありました。ですが、レンズ設計者は開放でのフワッとした絵を期待して設計していた訳では無く、当時は技術的に仕方が無い事だったのでしょう。
この問題はレンズが到着した日に室内でのテスト撮影中に直ぐに気付きました。画面中央部でこれ(jpeg撮って出しをピクセル等倍で中央部を切り出し)ですから、うわーっ、なんじゃコリャ!! って感じで、開放F1.4の明るいレンズならともかく、最新設計のはずのF2開放のレンズでこの写りの悪さは驚きました。f4まで2段絞ればシャキッとするのですが開放は甘すぎです。その場では、これだけ待って買ってこんな写りかよと、即ヤフオク行きだとおもったのでした。
Fujiが新たにXシリーズを展開し始めた当時、最初にラインナップされたレンズ群をみると、どのような状況で撮った絵でも写りの良さ、綺麗さに驚きます。もちろんボディ側のローパスレスのX-Transフィルターや画像エンジンに因る部分も多いでしょう。でも、あえてAFに不利な全群繰り出しという今時流行らない設計でのレンズをリリースしたのは、AFの速度が遅くとも写りの良さに特化させるという目標があったからでしょう。同じように、最新のこのXF23mmF2に関して言えば、小型軽量高速AF+近接撮影可能という目標があって、代わりに犠牲になったのが解放時の最短距離って訳なんでしょうね。
このレンズの評価は今後あちこちに出てくるでしょうが、ポジティブにものを考える人達の評価と、ネガティブな方向からものを感じる人達の評価で、おおきく点数が割れるレンズにはなりそうな気がします。
という訳で屋内の評価テストでは問題ありでしたが、実際に外に持ち出して使ってみると、これは素晴らしいレンズと呼べそうです。X-pro2にこのXF23mmF2を着けて、ゾーンフォーカス+顔認識、瞳AFモードにセットして高速なAFを利用して、クラシッククロームやアクロスのシミュレーションモードで街中でスナップ撮影しながら散歩したら最高に愉しめるでしょう。街を撮るのにこれ1本でといきたいのに、もうちょっと最短距離での開放画質はなんとかならなかったのとはおもってしまいますが…。
写真をクリックすると大きく見ることが出来ます。最後の1枚以外はリサイズのみのjpeg撮って出しです。
.
by troutinn
| 2016-10-26 21:44
| カメラ機材