クマゲラ |
今日はガイド最終日のお客さんを、あれこれ廻りながら空港へ送りです。何度も「鱒や」へ来られているお客さんで、実は中京地区某新聞社主催のフォトコンテストで、今日の朝刊発表の最優秀賞を取られました。事前に内定で本人は知っていたのですが、朝からお祝いの電話が携帯電話に次々とかかっています。受賞写真は去年、私のガイドで撮ったものです。
ガイド本人が写真を撮ってコンテストで受賞したり、個展を開いたりしている方も居ます。でも私としては、ガイドであるなら自分のガイドでお客さんが撮った写真が受賞することが、自分がコンテストで受賞することよりは、はるかに意義があるとおもってますから、これほど嬉しいことはありません。まあ、私がコンテストに写真を出したところで賞をくれるところなんて無いでしょうが。
さて、空港に向かう途中、まだ飛行機の時間には早いので、ちょっと寄り道です。このお客さんは以前にも、この最後のちょっと寄り道で撮った雪の中のベニヒワで、某雑紙の賞をも取っているのです。
今日も何か撮れるかなと森の中の雪道を走っていくと、あらら、なんと道路脇の大きな木にオスのクマゲラが穴を開けているのです。これには私もさすがにビックリ。クマゲラは車に驚いて森の奥へと飛んで行ってしまいましたが、私にはクマゲラがこの穴に戻って来ると確信がありました。
車を片側の雪の壁に突っ込んで、なんとか他の車が通れるようにして、車をブラインド代わりに窓を開けてクマゲラが戻って来るのを待ちます。案の定、数分もするとクマゲラが穴に戻ってきて、コツコツと大きな音を立てながら穴を掘り進めていきます。そして時々ながい舌を出して何かを食べているようでもあります。
穴を開けられている木は道路から3m程しか離れていませんし、穴は道路に向いています。手前に他の木もなく枝被りもありません。クマゲラまでの距離は車の窓から10mもないでしょう。これまで何度もクマゲラが餌を摂っているところは見ていますが、これほど近くで、それも丸見えの場所で写真を撮ったのは初めてです。
通行量の少ない道ではありますが、それでも数分に一台は車が通ります。クマゲラは車が通るたびに驚いて、木の後側に廻って隠れたり、森の奥へ飛んで行ったりします。でも、必ず戻ってきて穴の中で木を突き壊す作業を止めません。
クマゲラにとっても、これだけの大穴を開けるのはかなりの仕事量のはずです。それも穴が深く大きくなるまでは木の中に居るテッポウムシなどの幼虫を食べることも出来ないのです。虫が居る場所まで到達する準備の穴開けが、かなり大変だったはずです。クマゲラが車に驚いて、その度に飛んだり隠れたりしても、またすぐに戻ってくるのは、やっと虫の居るところまで苦労して大穴を開けて食べ始めたので、そう簡単にはこの穴を諦めることができないのでしょう。
クマゲラの開けた穴を見ると奥の方はガサガサで、どうやらかなりの虫が入っているようです。
こんな間近で観察したり写真を撮ったりで、お客さんも大喜びでしたが、車から降りることも車を移動することもできません。陽が差したり曇ったりで光の状況がコロコロ変わって撮りにくいところもありましたが、同じ位置からでは同じような写真ばかりしか撮れません。30分近く観たり撮ったりして終了としました。
明日は午後まで暇ですし、たぶんクマゲラは明日もこの穴を掘るとおもうので、もういちど独りで撮りに行こうかどうか、迷っています。