白糠のスチールヘッド |
この魚は昨日、白糠漁協としては西の端にあたる尺別の秋鮭の定置網に入った、漁師の言うところのテツ、つまりスチールヘッドなのでした。希に定置に入ると聞いたこともありますが、う〜む、これが道東のスチールヘッドなんだ。計ってみると尾叉長で72cm、推定4kgほどです。
(写真上がオスのシロサケ=アキアジ。下がテツ=スチールヘッドです)
滅多に獲れることは無いそうですが、なんと珍しく同じくらいの大きさのがもう1匹定置に入ったのだそうです。よく見ると鰓蓋の辺りが僅かにピンク色になっっています。捌いて切り身にするためにウロコを落とすと、これも僅かですが側線の辺りがピンク色ではあります。が、やはりギンピカの魚という感じですね、背ビレや尾ビレ、アブラビレには黒い斑点が見えて、これでニジマスなんだと判る程度です。
腹を割いてみると胃の中は何故か空っぽ。未成熟のスジコが入っていて、これは秋に産卵するシロサケならまだ7月頃の大きさです。単純に比較は出来ないでしょうが、となるとメスのこのスチールヘッドは12月か1月に産卵しようとしていたのでしょうか? でも、どこの川で?
スチールヘッドは降海型のニジマスと呼んでよいのかどうか? ヤマメの中で海に降りるものがサクラマスですが、ニジマスの中で海に降りるものがスチールヘッドと呼んでよいのかが判りません。それともニジマスの亜種としての海に降りるものがスチールヘッドなのでしょうか? ならば日本の川にはホントのスチールヘッドは居ない?
たしかに釧路川の河口近くの汽水域でニジマスを釣ったことがありますし、サケの定置網で混獲された35cmぐらいのニジマスも食べたことはあります。が、どちらも見た目は海に降りたニジマスでした。海に降りたニジマスがスチールヘッドなら、海面養殖のニジマス、つまりサーモントラウトはスチールヘッドなのでしょうか? これもどうも違うようにおもえます。
阿寒川や十勝川で釣れたスチールヘッドだという写真も見たことがありますが、どれも私には大きなニジマスのように見えました。でも、このスチールヘッドは銀色のビカビカなのです。これと似たようなニジマスを見たことがあるのは、実は屈斜路湖で、時々ですが50センチぐらいで、こんな銀色ビカビカのニジマスが釣れることがあります。だから余計に判らなくなる。まさか屈斜路湖で放流した稚魚の子孫じゃ無いですよね?
今日のこのスチールヘッドが十勝川や阿寒川、釧路川の魚なのかどうか? もし産卵に上がったとしても、オスの成熟したニジマスかスチールヘッドと出会えなければ再生産は望めないわけだし、その辺りが不思議です。道東の川でスチールヘッドが冬の産卵なら釣り人達の手から逃れている可能性はありますし、ならば夢のある話ではありますが、でも道東の川に上って産卵するのかなぁ?
サケの定置網には、これは主に春の(初夏の)トキ鮭の定置の話でですが、キングサーモンが入ることもあります。3キロほどのシロサケと同じサイズから、大きなものでは20キロを超えるものまで。これも滅多に獲れない魚とはいえ、多いときには一網に20匹ぐらい入ることもあるそうです。このキングサーモンを漁師や市場ではマスノスケとかスケとか呼びますが、これは日本の川に上って産卵するものではなくアラスカやカナダ辺りのものが回遊してきているらしいのです。となると、今日のこのスチールヘッドもアラスカやカナダ辺りか、もうちょっと近いカムチャツカから回遊してきたものなのかもしれません。
滅多に市場に出る魚じゃありませんから食べることが出来るのは、今回みたいに関係者から分けて頂けるようなときぐらいです。数が少なくて水産資源と呼べるような魚でも無いですから、日本近海での生態の研究なんてたぶんされていないでしょう。考えれば考えるほど、どんな生態なのかが不思議な気になる魚ではあります。
捌いてみるとサケと同じくらいに身は赤いのですが、火を通して照り焼きにしてみたところ、これもシロサケと同じように身の色は加熱で白っぽくなります。とても脂が乗っていて、これは6月の最上のトキシラズといい勝負です。フワッと柔らかく、味もクセが無く美味しいですね。すべて切り身にしてしまいましたが、何切れかは冷凍を掛けてルイベでも試してみようとおもっています。
未成熟卵は醤油漬けにしました。明日の泊まりのお客さん達の夕食には、スチールヘッドの照り焼きと醤油漬けのテツ子と、スチールヘッドのアラ汁が出る予定です。
追記:
つい先日、釣り旅の途中で寄ってくれたルアー釣りのお客さんが、茶路川に上りアメマスの釣りに行ったら去年の今時より更に釣れなくて…。で、川で出会った釣り人に聞いたのだけれど、白糠漁協がアメマスを網で獲って駆除しているんですってね、との話。まだ、この噂話が続いているんですねぇ。アメマスの駆除の話については、この写眞日記の昨年の大晦日、12月31日の日記を読んでいただければとおもいます。