『フライフィッシャーの昆虫学』 |
内地は暖かなようですねぇ。道東は涼しいというか、今朝などは寒いぐらい。写真は10時現在の気温で、14度!! 関東地方に早い梅雨明けをもたらした梅雨前線は、太平洋高気圧に押し上げられて北東北から北海道辺りに停滞したままです。このため天気が悪い日が続いていて毎日雨模様。でも、週間天気予報では18日の月曜日からは爽やかな夏の晴れた北海道になりそうです。内地がちょっと暖かすぎるかなと思う方、是非是非、道東へ遊びにおいで下さいませ。
釣りに行けない日、家で釣りのことばかり考えている釣り人をアームチェアフィッシャーマンと呼びますが、このところの私はアーロンチェアフィッシャーマンです。田舎暮らしに似合わない事務椅子なんかになぜ座っているかといえば、腰痛のせいなのです。腰が痛くて釣りに行けない、自転車にも乗れない、重いレンズを持って歩けない・・・
アームチェアフィッシャーマンもアーロンチェアフィッシャーマンも、椅子に座ってすることといえば釣りの本を読むことです。さてでは、何を読むか。
『フライフィッシャーの昆虫学』は170年前にイギリスで出版されたフライフィッシングの本ですが、川野信之氏による翻訳版がこの春に刊行されました。購入してパラッと数ページ読んで、これは忙しい時期に切れ切れにつまみ読むのは勿体ないと、読まずにとっておいたのです。
初夏の釣りシーズンも終わって暇になって、アーロンチェアに座って、さてと読み始めたら、これは予想を超えた面白さで読み始めたら止まりません。170年前の英国の釣り人と、現代の日本の釣り人と考えることが同じというのが、釣り人は釣り人ということなのか、170年かかって日本の釣り人が追いついたということなのか。
著者のロナルズは魚の生態を観察するために川の畔に小屋まで建てます。たとえば「鱒とグレーリングの観察」の章で、魚に味覚があるか? という疑問には、30匹のハエに赤唐辛子とカラシを塗って水に落としたら、魚は全て食べた。翌日、同じ実験をやっても魚は全て食べた。さらにオイルや酢に浸したものも与えてみたら食べた。そのうえで「もし鱒が味覚を持っているにしても味覚は、かなり鈍いという結論に達しました」と書いています。
この本は1863年に初版が出ているのですが、この年はイギリスではダーウィンがビーグル号での航海を終えて帰港した年ですから『種の起源』はまだ書かれていなく(発刊は1859年)進化論など全く考えられてもいなかった時代です。が、『セルボーンの博物誌』は1789年の出版ですから、当然、ロナルズは読んでいたでしょう。『フライフィッシャーの昆虫学』が世に出た頃は、英国においては博物学は全盛の時代なわけで、この本も当時の英国の博物学本的な手法で書かれています。銅版画による彩色の素敵なイラストも愉しめて、釣りに行けずにアームチェアフィッシャーマンになる一日、乙種釣り人向けには、これはお薦めの1冊ですね。