フジタ ベルト タイプ1 |
雨で出かけられないので昼飯のあとに、自転車のパーツを交換してみました。交換したのはシートピラー、最近ではシートポストと呼ばれていますね。今回の輪行ツーリング車を造るときのコンセプトのひとつが、極力現代パーツを使ってででしたが、シートピラー捜しで困りました。捜したのは27.2mm径でアルミ地色のシルバー色のものですが、カーボンシートポストやアルミ製でも黒塗りが多いなか、これはけっこう今のパーツでも見つかります。問題だったのがクランプ金具部がサドルの中に隠れて見えないタイプという条件で、これが見つからない。今時のロードレーサー(これもロードバイクと呼ばなきゃダメか)用のサドルはみな薄く、サドルのレールは横から見て丸見えですから、カンパニョーロのレコードタイプの、上側にレールを固定するタイプでもデザイン的には問題なしです。
が、革サドルの場合、BROOKSでもスワローやスイフトみたいなレールが見えるタイプなら現行のシートピラーでも良いのでしょうが、チームプロやB-17などのクラシカルなタイプのものの場合は、クランプ金具が見えないタイプのシートピラーの方がスッキリしていて格好いい。
1970年代にツーリング自転車がブームだった頃には、オーダーの高級車には仏製のサンプレックスのピラーが、大手メーカーのマスプロツーリング車にはサンプレックスのコピー商品だった、フジタやサカエのシートピラーが使われていて、どれももちろんピラーが隠れるタイプでした。
東叡社に発注に行った時に、なにかクランプ部の金具が隠れるタイプのピラーはないだろうかと相談したところ、現行ではグランコンペのピラーならけっこう隠れますよ、とのことだったので、それで製作をお願いしたのです。
3月の11日の震災の1週間ぐらい前だったか、東叡社から電話がありました。フレームが完成してパーツ組み付け中なのですが、使おうとおもっていたグランコンペのシートピラーが具合悪いんです、とのこと。ピラーの径が27.2mmなければならないところ、27.1mmにちょっと欠けるくらいしかないので、出来れば使わない方がよいと思う、との連絡でした。
組み上がったら東叡社に取りに行って、そのままツーリングへの予定でしたから(これは震災で中止になった)直ぐにでも何か代替品をとおもって仕方なく、とりあえず何でも適当なもので組んでおいてください、と頼んだのでした。
出来上がってきた自転車には日東のS65のシートポストが使われていて、もちろん機能的にはこれで問題は何もありません。で、このピラーのまま四国、瀬戸内への旅に行ったのですが、自転車に乗ってるときにはシートピラーなんて見えませんから、気にもなりません。ところが帰ってきてから旅のあちこちで撮った写真を見ると、自転車旅では風景と一緒に自転車を写すことが多いですから、なんか違うよなぁ・・・。
ここはシートピラーだけは古いものを捜すことにしようとeBay やヤフオクを見ますが出品は無し。まあ、たとえ出品されていたとしてもサンプレックスの27.2mmなんてのが出てたら、トンデモ値段になるのは間違いなし。さてどうしよう。まあダメもとでと小諸の浅麓堂に問い合わせたら、しばらく経って、フジタベルトのタイプ1なら27.2mmがありますとの返信。うーん、あるところにはあるんですねぇ。
送られてきたフジタベルトのタイプ1は新品未使用のデッドストック品でピカピカ。70年代のものでしょうが、なんと、少し痛んでいるけれど昭和レトロな素敵なデザインの元箱まで付いてきました。
このピラーはまったくのサンプレックスのコピー商品だけれども、サドルのレールを押さえる耳金具が、サンプレックスのものはひび割れやすいのですが、フジタのものは大丈夫。重さも200グラムを僅かに超えるぐらいで、アルミ製では現在のパーツから見ても、かなり軽量といえます。外国製品をまるまるコピーしながらも、よりよい製品へとして改良していった当時の日本の工業製品の縮図みたいなピラーですね。
で、今日はこのピラーへと交換作業だったですが、取り付けにはちょっと苦労しました。サドルは、このピラーの時代にもあったBROOKSですが、当時はなかったチタンレールです。このチタンレールが昔からのクロームメッキのスチールレールと少し形が違っていて、レールがやや細く間隔も少し狭い。キャラダイスのサドルバックサポーターを付けることがあるので、レールの直線部分をクランプ金具の後ろ側へ1センチは出さなきゃならないという条件もあって、ややサドルを引き気味な装着となります。でも、ツーリング車ではサドルを引き気味に着けるのが好みで、もう一台のクラシックツーリング車(こちらはサンプレックスのオリジナルピラーにBROOKSのスチールレールのサドル)も引き気味にセッティングしてあることですし、最終的には問題なしでした。
上の写真の左側が日東S65、右側が交換後のフジタベルト タイプ1。どうです、30年前のパーツの方が最新のパーツより格好良い場合もあるのです。
ツーリング車はロードレーサーに比べるとフレームを大きめに造りますから、シートピラーの出は少なくなります。今時のロードバイクはスローピングフレームの場合もあって、さらにピラーの出が多くなるので最近のシートポストの長さはずいぶんと長くなります。東叡社が着けてくれた日東65を交換のため抜いてみると、不要に長い分を5センチほどカットして、丁寧に切り口を丸く面取り加工してありました。見えない部分に気を遣った良い仕事をしてくれているなぁと、またまた感心したのでした。